「えんとこ」とは
東京・世田谷の住宅街にあるマンションの一室2DKが、遠藤滋と介助の若者たちの居場所。この物語の舞台です。遠藤の居るところであり、縁のあるところ、という意味で〈えんとこ〉と名付けられた、そこには生かし合う日々の暮らしがあります。
ありのままの命にカンパイ!!
「えんとこ」”縁”のある”トコ”。寝たきりの障害者、”遠”藤滋のいる”トコ”。
この映画は遠藤滋と介助の若者達との日々を3年間にわたって記録したドキュメンタリーです。
ヒューマンドキュメンタリー映画
『えんとこ』1999年/カラー/1時間40分 芸術文化振興基金助成作品
【'99年度キネマ旬報文化映画ベストテン第7位】【'99年度朝日新聞・今年の映画五選】
【'99年度日本映画ペンクラブドキュメンタリー部門第4位】
企画・製作:映画『えんとこ』製作委員会 一隅社 クロスフィット
文部省選定
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映画『えんとこ』主人公
遠藤滋 プロフィール
1947年5月
静岡県に生まれる。仮死状態で生まれ、1才の頃、脳性 マヒと診断される。
1974年3月
立教大学文学部卒業。
都立光明養護学校に、教員として採用され、職場での差別と闘いながら、小田急線・梅ヶ丘駅に車椅子用スロープをつける運動に関わったり、世田谷区に対して、介護人派遣制度の改善を求める運動を始めるなど、地域の障害者活動に積極的に参加する。
1985年7月
『だから人間なんだ』を友人と自主出版。この本づくりが、ありのままの命を祝福し、命を生かし合うことを、自己決定して生きるきっかけとなる。
1991年~
まったく寝たきりの状態となる。〈えんとこ〉の場で、介助者のネットワークを組織、独り暮らしが始まる。
だって、君はひとりで勝手に
何かをやってゆくことなんて
出来ないだろう?
君が今やりたいことを、まっすぐに人に伝えながら、
出来ないことは、みんなに手伝ってもらって、堂々と生きてゆきなさい。
先回りして、人がどう思うだろうか、これは、いけないことではないかとか、
勝手にひとりで考えてやめてしまう必要なんかないんだよ。
自分から逃げていては、何も始まらない。
そうして、自分が決めてやったことの結果を、
どんなことでもすべて自分で生かしていったら、
その時はきっと、いつの間にか、ますますすばらしい君になっているだろう。
それは、人に迷惑になるどころか、逆に人と人とが直接、
そのいのちを生かし合って生きる。
本当の人のあり方を、君に関わる全ての人に身を持って示して、
それを実現してゆくことになるんだよ。
だって、君はひとりで勝手に何かをやってゆくことなんてできないだろう?
(遠藤 滋「いのちの肯定に立つまでの私の歩み」より抜粋)
「もう一度・・・」 (演出・伊勢真一)
25年ぶりの再会が始まりでした。
私は、12年間撮り続けて完成させた映画『奈緒ちゃん』をぜひ観てもらおうと、大学時代の友人、遠藤滋を訪れ、ベッドに寝たきりの彼と出会いなおすことになったのです。
彼は、寝たきりの生活をもう10年近く続けていると言います。不自由な体を引き受けながら、自立したいという強い意志を持ち、介助の若者たちの力を借りて、一日一日を丁寧に生きている彼の姿に、心を動かされました。
遠藤が「俺を撮ってみないか?」とさそいかけているようにも思い、再会してまもなく私は撮影の安井洋一郎と共に、〈えんとこ〉と呼ばれる遠藤と若者たちの居場所に通 い始めることになります。そして、ちょっとお茶でも飲みに立ち寄るような気楽さで、気ままにカメラを回し、日常のあれこれを記録していきました。
一日24時間三交代、介助の若者たちの存在抜きに遠藤は生きてゆけません。
若者たちは、遠藤とかかわることで、実に生き生きとした表情を垣間見せてくれます。命を生かし合う関係、とでも言うのでしょうか・・・。
撮影が始まって3年目の夏、遠藤と若者たちにつきあって、伊豆の海に行きました。海の中で若者たちに支えられながら、歩こうとする遠藤の姿を目のあたりにして、3年間の日々の営みの記録を、映画としてまとめてみようと思いたったのです。
自分の足で歩こうとする遠藤のように、私は生きようとしているだろうか・・・。
もう一度、会うことになるとは思っていなかった、ひとりの友人との出会いなおしから生まれたドキュメント。〈えんとこ〉と呼ばれるささやかな、けれども切実な居場所の空気のようなものが伝わればそれでいい・・・。
「もう一度・・・」という思いから、もう一度始めてみよう。
”ありのままの命の物語”
遠藤滋、脳性マヒがもとで、寝たきりの生活を強いられて10年あまりになる。《ありのままの命にカンパイ!!》をモットーに、多くの若者たちの介助を得て、独り暮らしを続けてきた。遠藤滋が自ら組織した介助のネットワーク〈えんとこ〉にかかわった若者たちの数は、すでに1000人を越える。若者たちは介助を通じて他の場所では得難い[何か]をモノにしているようである。
この映画は、寝たきりの障がい者、遠藤滋と介助の若者たちとの日々の交流を、3年間にわたって記録したもの。それは、ひとりの障がい者と向き合い、介助の若者たちと向き合った、青春ドキュメンタリーでもある。〈えんとこ〉を舞台に、ありのままの命の物語が描かれる。
制作スタッフと”えんとこ” 〜企画のきっかけ〜
実はこの物語の主人公・遠藤滋と、伊勢真一(演出)、岩永正敏(企画)は、学生時代の友人である。3年前、伊勢の自主映画『奈緒ちゃん』の上映の件で、遠藤滋と大学卒業以来、およそ25年ぶりに再会し、交流が復活した。25年の時の流れは、それぞれを変えていた。遠藤滋は、学生時代のように走り回れる体ではなかった。ベッドの上で寝たきりの生活を、もう10年以上続けていた。
二度目の〈えんとこ〉への訪問からカメラを持ち込むことになる。以来3年間、遠藤滋に会いに行く度に撮影はくり返され、『えんとこ』での遠藤滋と若者たちとの日々の営みを記録した、膨大な映像が残された。遠藤滋と介助の若者たちの3年間を記録したドキュメンタリー『えんとこ』は、演出の伊勢、企画の岩永をはじめとする、遠藤滋と同時代に生きてきた、制作スタッフの出会い直しが、産み落とした作品でもある。
演出:伊勢真一/撮影:安井洋一郎/音響:米山靖/音楽:横内丙午/録音:渡辺丈彦/照明:三浦方雄/企画:岩永正敏/制作:野口香織 大場健二 篠塚昌述/制作進行:助川満/タイミング:笠原征洋/絵:山下菊二/制作協力:ケア生活くらぶ 立教大学 東京都立城南養護学校 高島平はすのみ教室 臨海セミナー ヒポコミュニケーションズ 東京テレビセンター 読売スタジオ ヨコシネD.I.A/製作:映画「えんとこ」製作委員会 一隅社 クロスフィット/テーマ曲:不屈の民(SERGIO ORTEGA & QUILA PAYUN)
観ていてとても気持ちよかった。うらやましいなぁと思った。重度の障害を抱えて生きていくのは大変しんどいけれども、「おもしろい、おかしい」と言った遠藤さんはすてきだった。彼のところに集まり、世話をしている若者たちもすばらしかった。“偉くなる必要はない。尊い自分に気づくことが大事だ。”
(Sさん 29歳 男)
笑顔やそのほかの表情が良かった。やっぱり人間にとって笑顔は不可欠であるなと思う。人間は完璧でないから人とつながっていることを感じた。完璧にならなくてもいいんだと思った。
(E.Iさん 21歳 女)
ともすれば福祉や教育の映画の陥りやすいところに陥ってない感動がありました。もう少し、自分の仕事をやり続ける自信がわいてきました。ありがとう。
(Y・Mさん 48歳 男)
映画のことは良くわかりませんが、桜の開花シーン、小さな子どもと鳩とマラソンの人のいる風景、伊豆の海、ラストに近いところでの元ボランティアの生後2カ月の赤ちゃん、こんなシーンがとてもほっとしました。
(T.Kさん 55歳 男)
自然に体を乗り出してみてアッという間に終わってしまったという素晴らしい作品でした。普段、娯楽映画ばかり接する機会が多くとても爽やかで印象に残る、また残っていくと思いました。
(54歳 女)
私の周りにいる、一人では暮らせない友人たちも、この映画を観て、”人を巻き込みながら生きる方法”を探って欲しいと思います。
(48歳 女)
「ありのままの命」という言葉、これは伊勢真一さんの永遠のテーマなのだと感じました。
(E.Tさん 48歳 女)
『えんとこ』を観て感動しました。テントに住んでいるリョウ君は大学で良くみかけた男の子で、久し振りにその姿を見て本当に不思議な感じがしました。“告発”ではなく、まさに“響き”。
(H.Sさん 25歳 女)
「意味もなくすることも楽しいですよね」と告白する男性に、「意味のない方が楽しいんじゃないか」と応え、友人のテントを訪れる遠藤さんは、あたたかい。海で遊ぶシーンも美しい。「遠藤さんは歩きたかったのだ」ということに気づかされるとき、忘れている人生への愛情を私にもぶつけられた気がした。
(A・Iさん 27歳 女)
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DVD「えんとこ 」
1999年/100分 伊勢真一演出作品
定価(個人視聴)5,000円(税込)+送料(実費)
ライブラリー価格※ 30,000円(税込)+送料(実費)
※ライブラリー価格とは…
病院・図書館・学校・公民館・地域のサークルや法人などで、不特定多数の方がご覧になることを想定して設定された価格です。
少人数によるセミナーや研修などで、資料としての視聴が可能です。なお、上映権はついておりませんので予めご了承ください。
書籍「えんとこ」*販売終了
遠藤滋と『えんとこ』上映委員会 編・著
価格 1,500円(税込)+送料(実費)
全244ページ A5判
【採録台本付】
◇収録内容 ◇
・座談会 映画『えんとこ』の誕生
第1部 遠藤滋の言葉と考え
・大学時代の手記
・教師時代の著述
・「えんとこ通信」より
・鼎談 みんな不完全燃焼だから出会うことことができるんじゃないか。
第2部 「介助者ノート」より
1980年からスタートし、約100冊にものぼる「介助者ノート」のなかから、
さまざまな声を抜粋。「えんとこ」の魅力を伝えるリアルな声を紹介。
付録 映画『えんとこ』完全採録