育み、育まれる家族のしあわせ。
重度のてんかんと知的障がいをもつ少女“奈緒ちゃん”。 この映画は、〈彼女が家族に育まれ、家族が彼女に育まれた〉少女時代の12年間を記録した ヒューマンドキュメンタリーである。 |
ヒューマンドキュメンタリー映画
『奈緒ちゃん』1995年/カラー/1時間38分 芸術文化振興基金助成作品
【毎日映画コンクール記録映画賞グランプリ】【'95年度キネマ旬報文化映画ベストテン第2位】
【第6回文化庁優秀映画作品賞】【山路ふみ子福祉賞】【JSC特別賞】【高崎映画祭特別賞】
【日本映画ペンクラブドキュメンタリー部門第2位】【ポレポレアカデミー作品賞】
【フランスリールドキュメンタリー映画祭特別招待】【山形国際ドキュメンタリー映画祭特別招待】
製作:奈緒ちゃん製作委員会・デコ企画
厚生省・横浜市・全国社会福祉協議会・社団法人日本てんかん協会・日本障害者芸術文化協会・共同作業所全国連絡会 推薦 文部省選定
伊勢真一のつぶやき(1995年)
「姉に長女が生まれた。しかし、普通ではない、何かの病気のようだ」と知ったのは、
記録映画の編集者だった父、伊勢長之助が亡くなった年、今から20年前のこと。
姉の長女、奈緒ちゃんの病気がてんかん(※)で、
知的障がいをともなっているとわかったのは、それからさらに数年後でした。
ドキュメンタリーの仕事を始めて、父にかかわりのあるスタッフとめぐりあい仕事を共にするようになった頃、奈緒ちゃんはすでに小学生になっていました。
奈緒ちゃんの映画を撮りたいとの願いに、一も二もなく応じてくれたのは、父の親友だったカメラマンの瀬川順一氏、父とは師弟関係にあった音楽・音響構成の木村勝英氏、編集の熱海鋼一氏でした。
クランクインは1983年1月3日。8才になった奈緒ちゃんのお正月の初詣のシーンでした。
フィルムが買えず、つきあいのあるプロダクションから古いフィルムを譲り受け、
みんな手弁当での協力に、奈緒ちゃんのお父さんは
「なんで、一銭にもならないことにあんなに夢中になれるのか。
映画づくりにかかわる人達の気持ちは理解できない」とさかんに首をかしげていました。
いわゆる福祉映画にするのはやめよう。
そのために、奈緒ちゃんとその家族の普通の日々をしっかり視すえてゆこう、
と奈緒ちゃんのもとへ通い続けました。
てんかんという病気には発作がともないます。
奈緒ちゃんが多い日には2度、3度と起こしていた発作を撮影すべきかどうか・・・。
スタッフの結論は、撮らない、ということでした。この映画の狙いはそこではない。
発作を描けばインパクトも強く、病気に対する理解も得やすいかもしれないが
奈緒ちゃんのその姿を見せ物にするのは忍びない。
しかし、それぞれのスタッフの心の中には、事実から目を離してはいけないという
プロのドキュメンタリースタッフとしての想いもありました。
そんな想いを知ってか知らずか、12年間の撮影中、
不思議なことに奈緒ちゃんは一度もスタッフの前で発作を起こしませんでした。
このフィルムには「しあわせ」が写っているとつぶやいたのは、大ベテランのカメラマン、瀬川さん。
「しあわせ」という言葉がなぜだかとてもなつかしく、新鮮な響きに聞こえたのを今でも忘れません。
<しあわせ、家族のしあわせ>
12年の歳月が流れて奈緒ちゃんは20歳に、お母さんは地域作業所のリーダーに、お父さんは会社や地域の要職に、弟の記一君はJリーグをめざす高校生に成長し、奇しくも父の23回忌にあたる今年、映画は完成しました。映画『奈緒ちゃん』はこれから、作品としてひとり歩きしてゆきます。多くの人に見守られることを祈るばかりです。
(※)てんかんとは、それまで何のかかわりもない人が突然発作を起こし、しかもその発作を繰り返す、大脳の慢性の病気のことです。現在、てんかん発作のほとんどは薬で抑えることができるようになりました。しかし、てんかんに対する恐れと誤解はまだまだ強く、就職、結婚などの際に差別を強いられることも多く、患者やその家族が病気をひた隠しにする傾向があると言われています。国際てんかん協会の試算によると、現在、世界には人口のおよそ1パーセントのてんかん患者がいます。日本では、およそ100万人の患者がいるにもかかわらず、まだまだ社会的には知られることの少ない病気です。主人公の奈緒ちゃんは、続発性全汎てんかんのひとつであるレノックス症候群とよばれる重度のてんかんをもち、知的障がいも併せもつ重複障がい者です。
出演:奈緒ちゃん(西村奈緒) お母さん(西村信子) お父さん(西村大乗) 弟(西村記一) 奈緒ちゃんの友人たち/演出:伊勢真一/撮影:瀬川順一/音響構成:木村勝英 伊藤幸毅/編集:熱海鋼一/語り:伊藤惣一/製作:大槻秀子/製作:奈緒ちゃん製作委員会 デコ企画/協力:社団法人日本てんかん協会 横浜市立上飯田小学校 横浜市立上飯田幼稚園 地域作業所ぴぐれっと 向ヶ原地区のみなさん
まるで自分の親戚の家の出来事を見聞きするような、親身な気持ちで見ることのできる映画でした。とても良かったです。
佐藤忠男[映画評論家]
奈緒ちゃんのイノセントさとユーモアがまわりを勇気づけてくれる。励ましてくれる。奈緒ちゃんはしっかりと生きている、と思った。
熊埜御堂朋子[NHK・ディレクター]
平凡な家庭のなかで、〈障がい〉と立ち向かう。西村家の〈ノーマライぜーション〉の実践といえよう。
松友了[国際てんかん協会・副会長]
奈緒ちゃんがうらやましい!お父さん、お母さん、地域の人々!みんなあったかくて素敵!涙が止りませんでした。
石川牧子[日本テレビ・アナウンサー]
知的障がい者と呼ばれる人たちが、われわれの住む社会にとっていかに平和的でかけがえのない友人であったのかということが、この映画を観るとよくわかる。
小室等[シンガー]
子育てが必死だった時には大きかった公園が、ある日とってもちっぽけに見える。十二年ひとつの家族を見続けたことで、そんなふうに家族の風景が時代と共に見事にあぶり出しにされている。
佐藤真[映画監督]
映画関連商品のご紹介 ※「印刷用データ各種」からFAX発注書をダウンロードしてご送付、または「お問合せ」からメールにてご注文いただけます。
映画ブックレット
「奈緒ちゃん 〜育み、育まれる家族のしあわせ〜」
西村信子 他 著 価格 800円(税込)+送料(実費)
DVD「奈緒ちゃん 」
1995年/98分 伊勢真一演出作品
定価(個人視聴) 3,150円(税込)+送料(実費)
ライブラリー価格※ 15,750円(税込)+送料(実費)
※ライブラリー価格とは…
病院・図書館・学校・公民館・地域のサークルや法人などで、不特定多数の方がご覧になることを想定して設定された価格です。
少人数によるセミナーや研修などで、資料としての視聴が可能です。なお、上映権はついておりませんので予めご了承ください。
DVD「ぴぐれっと」
2002年/98分 伊勢真一演出作品
定価(個人視聴) 5,000円(税込)+送料(実費)
ライブラリー価格※ 30,000円(税込)+送料(実費)
※ライブラリー価格とは…
病院・図書館・学校・公民館・地域のサークルや法人などで、不特定多数の方がご覧になることを想定して設定された価格です。
少人数によるセミナーや研修などで、資料としての視聴が可能です。なお、上映権はついておりませんので予めご了承ください。
「奈緒ちゃん新聞」は、12年間の撮影を経て1995年に完成した映画『奈緒ちゃん』の上映の輪が広がっていく動きと共に創刊されました。映画『奈緒ちゃん』を観た人、観たい人、観せたい人の間をつないだ新聞です。
白い紙に、黒い文字。いたってシンプルな手づくりの新聞ですが、映画を観た人たちの声をストレートに伝え、上映を通して生まれる出会いの喜びを素直に語り、タイムリーに上映スケジュールを届ける。見かけは地味でも、この新聞が果たした役割の大きさは、つくっていた奈緒ちゃん応援団のメンバーの予想を上回るものでした。
”奈緒ちゃんシリーズ” 第4弾の映画『やさしくなあに〜奈緒ちゃんと家族の35年〜』を応援しよう!と、
「奈緒ちゃん新聞」ならぬ「やさしくレター」が発行されました!
映画『やさしくなあに』を応援するサイト、「やさしく応援団」のウェブサイトでご覧いただけます。